業務品質管理とマニュアル化

物流百科事典
2020.06.21

ようやく物流の世界でも品質管理が語られるようになってきたのは好ましいことではあるが、問題はそれをどう具体化するかという方法論と目標である。
これが確実に実行されれば、結果としてコストや採算改善にもつながる。

物流工程における品質管理の重要性:物流で発生する危害

一連の食品不祥事の中で、商品再検査判定で出荷保留になっていた商品を誤出荷したものが使われて、大きな食中毒事件を引き起こしたというケースがあった。
これは明らかにロジステイクス運営上のミスであり、大きな危害発生につながった。
商品の詰め替えや表示の偽装、賞味期限を一方的に打刻し直して出荷したケースは経営のコンプライアンスの問題であるが、いずれも物流工程や機能として発生している。
物流工程で発生する危害は表-15に示すように幾つかのパターンがある。
製造工程で完全に品質保証されたものが、物流工程で維持できなければ多くの努力が水の泡となる。
従って物流は企業全体としての品質管理の最終工程であり、重要な顧客との接点である。
委託を受けた物流事業者が工程として管理していかないと、最終消費者への品質を実現することはできない。
特に鮮度管理のような課題は製造工程だけで実現することは不可能で、物流。
流通工程との機能分担が必要であり、委託を受けた事業者としての責任が生じる。
それは単にミス・トラブルを防止する程度の問題ではない。

物流における品質管理とは

不正な表示や商品の偽装が行われたという事実はもちろん論外であるが、物流工程においては、製造工程で品質保証された商品の品質を維持し、危害を発生させないということがまず重要な前提である。
さらに加えれば物流の後工程としての顧客からの要求を自責部分は自らが問題解決し、他責部分は前工程としての製造部門に伝える責任もある。

品質としての要素は次のように考える。

(物流における品質の要素)
(狭義の品質):防衛的当たり前品質

  • 1. 製造で品質保証された商品を維持する:保管環境、外的衝撃
  • 2. ミス・トラブルを防止する:誤出荷。誤配送
  • 3. 顧客との接点・支援機能を強化する:納品技術タリテイルサポート

(広義の品質):能動的魅力品質

  • 4. 顧客からの高度要求に対応する:サービス水準、システム化対応等
  • 5. 顧客からの要求を前工程に伝える:自責部分は自ら消化
  • 6. 環境対応・社会的責任の遂行:環境負荷軽減、その他対応法
  • 7. 業務提案。業務設計力の向上:受け身から能動へ

これを短長期の目標に具体化し、経営がリードし全従業員を巻き込む政策が重要である。

品質管理の出発点は顧客概念と現状の定量化

物流は製造工程ではないのでサービスとしての質の管理であり、それを誰に提供するのかという概念がまず重要である。
つまり顧客概念であり、基本的には納品先としての顧客である。
そのサービスの受け手を通じて、最終的には消費者にいい仕事をつなげていくことになる。
依頼者としての前工程も当然顧客であり、この両方を見ていかなければならない。
これを具体的に管理業務として組み立て、実行していくわけである。

(物流工程における品質管理実行の方法)

  1. 顧客概念をはっきりと持つ
    : 品質要求(依頼者)と品質保証(実行者)の関係と項目を明らかにする
  2. 現状業務の不具合を定量化する
    :データによる分析、問題点を抽出する(優先順位づけ)
  3. 結果から原因を追求する
    :工程分析、不良の原因を取り除く
  4. 再発防止策を立てる
    :同じ原因でニ度とミスを起こさない
  5. この過程を繰り返す
    :PDCAサイクルを回す、管理状態を作る

改善と改革の2つの側面

ミス・トラブルを防止し全体の意識を高めて、改善を自主的に進める風土を作っていくことも重要であるが、一方で経営がリーダーシップを発揮しトップダウン型の改革を並行していかないと、上記したボトムアップ型の活動も続かないし、最近のような変化の激しい時代ではそのスピードにもついていけなくなる。
業務の品質を高めるためには、この改善の2つの側面が必要である。
後者のトップダウンはどちらかといえば問題解決型であり、前者は課題達成型である。
この両面の活動がかみ合って、組織全体の力が高まれば品質能力も向上する。
広義の品質はこのような状況にならなければ実現しない。
品質管理の力こそが物流工程としての評価を高める基本要素であり、ロジスティクスやサプライチェーンという広範囲なシステムにおける 重要な機能分担である。

業務標準化とマニュアル化

PDCAサイクルが繰り返され、その過程で問題解決や改善がなされた軌跡こそが業務標準化である。このレベルが高まればある程度のことは誰にもできるようになり、パート・アルバイト等を活用するアウトソーシングも可能になる。情報システムを構築する上でもこの業務標準化は重要である。
標準化された内容はマニュアルとして書類上に規定され、さらに具体的に使われることによつて改良が加えられメンテナンスされていく。
従ってマニュアルはスタッフが作文したものではなく、実際に仕事をして使っている人自身が作ったもので、常に直されているものでなければ意味がない。