保冷剤への切替はCO2削減によるSDGs達成への第1歩

冷媒・熱媒
2021.07.24

接種会場へのワクチン輸送、そしてワクチンの一時保管用としてドライアイスが使用されています。もともと、ドライアイスの多くは、食品や医薬品の低温輸送を受託する物流会社へ出荷されてきました。新型コロナウイルスワクチンの接種に伴い、現在は品薄状態が続いています。近年は原料不足でそもそも品薄が続いていましたが、現在は、それにも増して供給体制が厳しくなっています。国内のドライアイス製造は大手4社が9割以上を占めていますが、中には海外からドライアイスを調達している物流会社があるという話も耳にします。
ドライアイスの原料は石油の精製過程で出る高純度の炭酸ガスですが、ここ最近はハイブリッドカーや電気自動車の普及によりガソリン消費が減り、石油元売会社は製油所の統廃合を進めています。これにより、ドライアイスの原料である炭酸ガスの出荷量は大きく落ち込み、ドライアイスの製造に影響を及ぼしているというわけです。相当量のドライアイスを使用する物流会社は、原料不足とワクチン輸送により従来に比べ調達が難しくなるばかりか、高騰する費用にも頭を悩ましているというのが現況です。今回は、CO2削減によるSDGs達成を視野に入れたドライアイスから保冷剤への切替(納品事例)について紹介させていただきます。


■目次■
1.冷凍食品とアイスクリームの許容上限温度は-18℃
 1-1.保冷剤(-25~-22℃グレード)の投入で-18℃以下をキープする
 1-2.高性能保冷ボックスとの併用
2.急速凍結庫の利用で凍結時間を一気に短縮
 2-1.急速凍結庫の製品概要
 2-2.急速凍結庫の凍結能力
3.まとめ


1.冷凍食品とアイスクリームの許容上限温度は-18℃


ほとんどの場合、冷凍食品やアイスクリームは-20℃よりも低い環境条件で配送されます。商品や銘柄によっても異なりますが、多くのアイスクリームのパッケージには「要冷凍(-18℃以下)」と書かれています。こうした背景もあって、配送中の許容上限温度を-18℃に設定される物流会社が多く存在するのかもしれません。ただ、-18℃はあくまで許容上限温度ですから、-18℃ギリギリでは融解がはじまる寸前の状態で配送することになるため、温度的に余裕がありません。工場や物流センター内では-25℃環境で保管されていますので、配送中も出来れば-25℃程度を維持することが望ましいと言えます。

1-1.保冷剤(-25~-22℃グレード)の投入で-18℃以下をキープする

-18℃以下を維持しようとした場合、従来はドライアイスを投入していました。ただ、配送時間や物量に応じた適量のドライアイスを都度算出することは難しく、必要以上のドライアイスを投入してしまい、店舗到着後には溶けきっていない余したドライアイスを廃棄することも珍しくありませんでした。以前に比べ高騰したドライアイスの購入価格をどうにか改善しようと取り組んでも、こうした無駄を生んでしまっては、その努力は実を結びません。「持続可能な開発目標(SDGs)」としてCO2削減に取り組む企業が増えるなか、いつまでもドライアイスの使用を続けるのではなく、低温グレードの保冷剤に切り替える物流会社は増加傾向にあります。-18℃以下をキープするために採用されるのは、-25~-22℃グレードの保冷剤。ブロー容器に入った保冷剤は何度も繰り返し使用できるため、消えてなくなるドライアイスのようにランニングコストがかかり続けることもありません。数ヶ月だけスポットで冷凍輸送の業務を受託される物流会社は少ないはずですから、数年単位で業務されることを想定すれば、保冷剤調達のイニシャルコストはドライアイスを調達し続けるランニングコストを下回る公算が大きいと言えます。

1-2.高性能保冷ボックスとの併用


冷凍食品とアイスクリームの配送用途として、真空断熱材(VIP)を採用した高性能保冷ボックスと-25℃保冷剤を採用いただいた事例があります。こちらの事例は、外気温+30℃のなか17時間-18℃以下(品温)をキープされています。ここまで長時間にわたり-18℃以下をキープすることが出来れば、配送途中に保冷剤を追加投入することなく遠方への納品を可能にします。仮に、冷蔵車(チルド帯/+5℃程度)で配送すれば目標とする-25℃とは30℃の温度差となりますが、常温車(+30℃程度)のなか-25℃をキープしようとすれば温度は55℃も乖離することになります。出来るだけ他の食品と一緒に常温車に混載したいというユーザー様のお声も多くいただいています。通常の保冷ボックスよりも外気温の影響を受けにくい真空断熱材(VIP)を用いた保冷ボックスを併用することで、-25℃保冷剤はより能力を発揮します。低温グレードの保冷剤を投入するだけでなく、他資材とどのように併用するか適性を見極めることが重要と言えます。

2.急速凍結庫の利用で凍結時間を一気に短縮

保冷剤の完全凍結には凡そ2日間を要するというのが、これまでのセオリーでした。また、融点(温度グレード)に対して-15℃低い環境で凍結させることも準備要件の1つに挙げられていましたが、ここ最近は、従来よりも短時間で凍結する保冷剤や15℃の温度差を必要としない保冷剤も登場しています。(※これら新商品については、また別の機会に詳しく紹介させていただきます)
ただ、それら新しく登場した保冷剤であっても、冷凍室内における保冷剤の配置や冷風の当たり方次第では、完全凍結していないケースが散見されます。大量の保冷剤を必要とする物流会社では、出来るだけ短時間で完全凍結させ、順繰り資材を回転させていきたいはずです。ここでは、保冷剤と並行して準備が必要となる急速凍結庫について紹介させていただきます。

2-1.急速凍結庫の製品概要

蓄冷剤凍結を目的に作られた専用の急速凍結庫(製品A)は、冷風の出力と冷気の循環に大きな特徴があります。天部からだけではなく側面からも冷風を出力できる構造になっているため、凍結庫内を冷気が循環し常に撹拌し続け、万遍なく保冷剤に冷風を当てていきます。
【製品A/仕様】
・外寸法:W750×D800×H1,905mm
・定格内容積:423L
・製品質量:143kg
・電源:3Φ200V(50/60Hz)
・冷媒ガス:R404A(充填量750g)
・霜取り方式:ヒーター方式
【製品A/電気代の目安】
・年間:凡そ72,000円程度
・1ヶ月あたり:凡そ6,000円程度 (72,000円÷12ヶ月)
・1日あたり:凡そ200円程度 (6,000円÷30日)

2-2.急速凍結庫の凍結能力

0℃グレード(内容量750g)の保冷剤であれば、質量100kgを凡そ15時間で完全凍結することができ、-25℃グレード(内容量500g)の保冷剤であれば、質量100kgを凡そ31時間で完全凍結することができます。
【製品A/保冷剤収納量の目安】
・専用バスケット×8ヶ (凍結庫1台につき)
・1バスケットに14~16枚程度を収納可能
・112~128枚程度を一度に収納
・バスケットの隙間にも立掛ければ、凡そ130枚程度を一度に凍結することが可能
※1,000gタイプの保冷剤(サイズ:縦290×横180×厚み34mm)の収納を想定

3.まとめ

以上、保冷剤と凍結庫についての補足も交えながら、ドライアイスから保冷剤の運用に切り替えた事例を紹介させていただきました。端的に大事なことを3点にまとめると、次の通りです。
・配送する食品の管理温度に合わせて適性グレードの保冷剤を選定し、適当量の保冷剤を投入する
・高性能保冷ボックスを併用することで保冷剤の能力を引き出し、温度保持時間を長くする

・保冷剤の使用/回収/凍結を迅速に回転させるため、急速凍結庫を用いる
ドライアイスの冷熱量に比べると保冷剤の冷熱量は確かに劣ります。ですが、ドライアイスは消えてなくなります。1度きりしか使えないドライアイスを毎回購入して使い続けるのではなく、何度もリユースできる保冷剤へ切り替えることでCO2の削減に貢献してみませんか。「将来世代のニーズを損なわずに、現代世代のニーズを満たす開発」が求められるいま、目の前にある出来ることを1つ実現させる企業姿勢は、将来にわたり継続し発展していくために必要なものではないでしょうか。環境問題や社会問題の解決に貢献しながら利益を獲得していく、寧ろ、そこへの配慮がないと企業は存続していかない、そんな時代が来ようとしています。私たちキラックスは、地球環境へ配慮し社会問題解決に貢献する企業を全力でサポートさせていただきます。そのような企業をサポートさせていただくことが、私たちキラックスの社会貢献でありメーカーとしての責務だと考えます。保冷剤への切替を検討されている企業のご担当者様、是非ともお気軽にご相談ください。



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