ドライアイスを使用した温度管理輸送と保冷ボックスの活用方法

業界あれこれ
2022.04.16

昨今、「温室効果ガスの削減に向けて!」など環境負荷対応の取組みにも話題として頻出することの多いドライアイスですが、冷凍・冷蔵車両が普及する以前から冷凍品(医療品・食料品)の輸送に活躍している冷媒です。もちろん当社保冷ボックスとも活用される資材となります。
今回はドライアイスの特性・成り立ちから保冷ボックスへの活用方法、ドライアイスの代替方法についてご案内します。ご拝読頂ければドライアイスの取扱い方法がわかるだけでなく、ベストな保冷ボックスへの活用手段についてヒントが得られると思います。

◎ドライアイスに関するその他の記事はこちら
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■目次■
1.ドライアイスとは?
 1-1.ドライアイスの特性・温度
 1-2.ドライアイスの成り立ち
 1-3.ドライアイス保存についての注意点
 1-4.ドライアイス市場の近況
2.保冷ボックスへの活用方法
 2-1.ドライアイスを有効活用できる保冷ボックスとは?
 2-2.保冷ボックスへ使用する場合の注意点と工夫
3.ドライアイスからの脱却
 3-1.蓄冷剤の特性・温度の違い
 3-2.ドライアイスからの代替メリット・デメリット
 3-3.ドライアイスから蓄冷剤への代替運用
4.まとめ

1.ドライアイスとは?

1-1.ドライアイスの特性・温度

ドライアイスを活用するためにまずはドライアイスを知って頂くことから始めたいと思います。ご存じの方も多いと思いますが、ドライアイスは空気中にもある二酸化炭素が固体となったものです。ちなみに液体では「液体二酸化炭素」、気体は「炭酸ガス」と呼ばれており状態によって名称が異なります。特性として、周囲が常圧(約1気圧、通常の大気圧のこと)の場合では固体からそのまま気体へ変化します(これを昇華と言います)。-79℃より温度が高くなると昇華してしまいますので通常 保存することは困難となります。

1-2.ドライアイスの成り立ち

続いてドライアイスができる過程を紹介したいと思います。ドライアイスは石油精製やアンモニア製造工程の副生ガス(副次的に生産されるガス)として発生する二酸化炭素(CO2)を原料とした液化炭酸ガスから製造されています。液化炭酸ガスから不純物(水素、酸素、窒素など)を種々の精製工程で除去し、脱湿、その後も不純物除去を繰り返し、99.99%以上の高純度の液化炭酸ガスに精製されます。そして低温・高圧下に貯蔵された高純度の液化炭酸ガスをドライアイスプレス機に注入し、圧縮することによって硬いドライアイスが製造されるという工程を経て皆さんのイメージする白い固体=ドライアイスとなります。

※エア・ウォーター炭酸株式会社ホームページより抜粋
関連リンク:https://www.awci.co.jp/library/process.html

1-3.ドライアイス保存についての注意点

ドライアイスの取扱いにあたっての注意点をいくつか挙げさせて頂きます。ドライアイスの温度は約-79℃と非常に低温です。溶けても液体にならず、どんどん昇華(固体から気体)してしまいますので長期保存には向きません。一般的な家庭用冷蔵庫や業務用冷蔵庫でも-20℃~-30℃程度であるため保存にはお勧めできません。それでも少しでも長く保存したい時には紙類(新聞紙)と布(タオル)などで包むことを推奨します。できる限り外気に触れないように包み込むことで昇華のスピードを遅らせることができます。
取扱い時には①直接触れないこと、②密閉にしないこと(昇華することで体積が約750倍以上に膨れ上がるという性質により容器によっては破裂する可能性があるため)に注意して保存してください。キラックスでもドライアイス保存に適した容器をご案内することはできます。

1-4.ドライアイス市場の近況

こうして副次的に生産されたガスで製造されるドライアイスですが、最近では従来の低温輸送・保管用、電子部品の洗浄用としての使用に加え、食品デリバリーの増加や新型コロナウイルスワクチンの輸送にも使われるなど需要は高まっている傾向にあります。
一方で、ドライアイスの原料である「高濃度炭酸ガス」を排出する製油所の閉鎖が相次ぎ、原料不足が課題となっていることなどから国内のみの製造では追いつかないため、海外調達で賄っている状況となっています。さらに石油に代わりLPGの輸入が増加していることによる原料費や物流費の高騰により、ドライアイスを製造している企業各社からコストアップが発表されています。

2.保冷ボックスへの活用方法

2-1.ドライアイスを有効活用できる保冷ボックスとは?

ドライアイスはいわゆる一般なマイナス温度帯の蓄冷剤(保冷剤)に比べ、圧倒的に保冷力のある冷媒です。そのドライアイスを有効活用できる保冷ボックスの構造として重要な点は①設置場所、②冷気の回り易い収納環境、③断熱性能向上の3点です。
ドライアイスは約-79℃という低温により自ら強力な冷気を発し続けますが、その冷気をいかに容器内に充満させるか、外気の温度影響を受けにくくするかがポイントとなります。単純に冷気は下降することから容器内の商品の上に乗せる、これは触れた商品を傷める原因となるのでNGです。保冷ボックスの内部天井面に冷気の通り易い素材の収納ポケットを設置できれば十分な効果を発揮します。さらに以下、画像のように収納するポケットに網目が極力粗いネットを使用することも効果的です。粗い目のネットを使用することで冷気により発生する霜で網目が埋まることを抑止する効果もあります。3点目の断熱性能の向上についてはドライアイス以外にも言えることで保冷効果を持続させるために、より断熱性能の高い断熱材を使用することで持続力を保つことができます。

◎キラックスの保冷ボックスはドライアイスの有効確立が可能です。
キラックス製保冷ボックス『ネオシッパー』サイズや特徴を1から解説!

※画像左:粗い目の収納ポケット、画像右:細かい目の収納ポケット

2-2.保冷ボックスへ使用する場合の注意点と工夫

続いて、ドライアイスを使用する場合の注意点として、新聞紙などに包んで使用すると長持ちするといったことを耳にしますが、これは冷気を阻害してしまい冷却効果も得られない状態となっているのであまり意味がありませんので使用時には養生せずにご使用をお勧めします。保冷ボックス内に効率的な冷気を充満させるための工夫として、容器の内部天井面に設置する収納ポケット(粗目)に複数枚を重ねて入れるよりも複数箇所に設置することでドライアイスが空間に接する面積を広く確保することができ、保冷効果を高めることができます。

3.ドライアイスからの脱却

3-1.蓄冷剤の特性・温度の違い

ここまでドライアイスや保冷ボックスの活用方法をお伝えしてきましたが、上述の通り副次的に生産されたものとはいえ、消耗資材であること、製造過程や昇華には二酸化炭素の排出を伴うこと、調達価格の高騰が続いている経済的な側面からも持続的な運用に対して見直しを図っている企業が多いことが事実です。そこでドライアイスの代わりとして活躍が期待できる冷媒が蓄冷剤(保冷剤)となります。
(「蓄冷剤とは?保冷剤との違いについて」はこちら)
業務用蓄冷剤として多く使用されるのはブロー成形(中空成形)された樹脂製容器に水や各種添加物で融点調節された蓄冷剤となります。ドライアイスと違い、冷凍庫で凍結させて使用でき、融解後は再凍結して使用するなど繰り返しの使用が可能であることが最大の特性となります。また、ドライアイスの温度である約−79℃までの低温ではないものの、0℃以下−25℃ほどの融解温度設定となっている蓄冷剤は近年、一般的なものになっております。蓄冷剤の凍結には業務用凍結庫や急速冷凍庫と呼ばれる蓄冷剤専用の凍結庫が使われます。

3-2.ドライアイスからの代替メリット・デメリット

ではドライアイスから蓄冷剤へ冷媒を切り替えることでどのようなメリット・デメリットがあるか
実際に挙げてみます。

○ドライアイス運用から蓄冷剤運用としたメリット
・繰り返し使用することができる
・取扱いや保管が容易となる(危険性が少ない)
・長期的な運用でコスト削減が見込める
・安定調達ができる

●デメリット

・超低温(約−79℃)を維持できる
・使用後は昇華によりなくなるのでワンウェイ輸送に向いている(回収が不要)

上記の通り、蓄冷剤運用の最大のメリットは繰り返しの使用や取扱いの危険性が少ないことが挙げられると思います。ドライアイスは超低温であるが故に直接触れた場合の凍傷や密閉空間での酸欠の恐れなど作業人員へリスクが大きい点があります。一方で、蓄冷剤については繰り返しの運用であるが故に回収物流のフローやそれを踏まえた一定数の調達が必要となるため初期投資がかかる点はデメリットとも考えられます。

3-3.ドライアイスから蓄冷剤への代替運用

温度管理輸送において、ドライアイス運用から蓄冷剤を使った運用への切り替えについて要点を挙げます。上述のように蓄冷剤への切り替えには初期投資がかかります。これは蓄冷剤のみではなく、使用する保冷ボックスや蓄冷剤を凍結するための凍結庫(冷凍庫)を含めた設備投資も必要となるためです。その点を踏まえ、且つリユース可能な運用フローを構築することが必要となります。もちろん肝心な保冷性能の検証も必須となります。
キラックスでは数々の運用パターンを想定し、保冷ボックス設計のみならず輸送品質や作業性・コストを踏まえた運用検討・運用検証をお手伝いすることができます。
ドライアイス代用に【最強保冷ボックス×蓄冷剤】はこちら)

4.まとめ

今回はドライアイスを活用する場合の温度管理輸送と蓄冷剤を使用する場合の運用についてご案内しました。各企業様の環境指針や商品品質の維持・向上及び輸送環境や労働環境の課題に対し、冷媒にドライアイスを使用するか蓄冷剤を使用するかの選択はあくまでも運用改善の一つに過ぎませんが、その第一歩としてまずはお気軽にお問い合わせください。長年、業務用保冷ボックスを製造し、培ってきた専門知識を活かし、お客様ごとの状況に適した温度管理輸送・保冷ボックスのご提案をさせて頂きます。

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