カゴ車の正しい使い方と保冷品の運び方|それでもカゴ車やめますか?
休むことを知らない物流業界。私たちの日々の暮らしを支えてくれている物流業界のなかにおいて大活躍するマテハン機器の筆頭格が「カゴ車」です。ところが、ここ最近は、カゴ車の運用をやめたい企業が増えているといいます。何故、カゴ車をやめたい企業が増加傾向にあるのでしょうか?事故リスクの回避。代替品への切り替え。温度管理における課題。カゴ車が敬遠されはじめている理由はどこにあるのでしょうか?
誰しもが一度は見かけたことのあるカゴ車。今回は、便利なはずのカゴ車が厭われはじめた理由を探りつつ、安全に作業するための正しい使い方を説明していきます。また、カゴ車に替わる台車を取り上げながら、カゴ車と親和性の高い保冷カバーや保冷ボックスについても紹介してみたいと思います。
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―目次―
1.カゴ車に起因する労働災害事故とは?
1-1.カゴ車事故①/フード&ドラッグ店舗配送中に起きた不慮の事故
1-2.カゴ車事故②/宅配便大手の協力会社ドライバーに起きた不測の事態
2.カゴ車について深く知る
2-1.カゴ車で安全に作業するためのポイント
2-2.カゴ車の代替候補
3.見直したいカゴ車の保冷品輸送
3-1.カゴ車ネオシッパーM型
3-2.カゴ車用ネオシールド(フルサイズ)
3-3.カゴ車用ネオシールド(1/3サイズ)
4.まとめ
1.カゴ車に起因する労働災害事故とは?
カゴ車は、「ロールボックスパレット」「カーゴテナー」「コンビテナー」「カゴ台車」とも呼称されます。本来、輸送機であるはずのカゴ車ですが、スーパーやディスカウントストアでは、そのまま商品棚として使用されることもある利便性の高い機器です。
荷台が格子状の柵で囲まれているため、荷物を積み上げても柵が支えとなり、荷崩れするリスクが少ないという特徴があります。平台車に荷物を積み上げただけでは、移送中にどうしても荷崩れを起こしてしまいがちですが、カゴ車は段ボールでもコンテナーでもバラ積みにした食品でも、重量物を安定した状態で運ぶことができます。
しかし、近年は、カゴ車を使用したことに起因して様々な労働災害が発生しています。厚生労働省が発表した統計データによると、最も多い災害は「下敷き事故」です。また、怪我をした半数近くの方が作業経験1年未満だったことから分かるように、作業に慣れていない、もしくは慣れた気になって作業している時期は事故が発生しやすい傾向にあります。
出典:厚生労働省「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル」
年間で起きるカゴ車事故は、約1,000件といわれています。カゴ車を使用する業務にどれだけ経験値があったとしても、注意を怠ってはなりません。まさに、油断大敵です。人力運搬機ではありますが、積載された荷物は相当な重さになります。不慣れな方も作業慣れした方も、危険予知活動について、しっかり勉強しておく必要があるといえるでしょう。
1-1.カゴ車事故①/フード&ドラッグ店舗配送中に起きた不慮の事故
国内の物量が増える年末は、カゴ車による事故発生率が高くなります。物量が増えれば増えるほど、カゴ車を運用する機会は増え、慌ただしく作業することも多くなるため、どうしても事故が発生する確率が高くなってしまいます。
2020年11月、札幌市北区のドラッグストアで、トラックから荷下ろしをしていた男性ドライバーが亡くなっています。男性は、飲料水や酒類が入った段ボールが積まれたカゴ車を移送中に、下敷きとなりました。重量は、数百キロ程あったといいます。一度に効率良く大量の荷物を運ぶことができるカゴ車ですが、常に危険と隣り合わせであることを忘れてはなりません。
1-2.カゴ車事故②/宅配便大手の協力会社ドライバーに起きた不測の事態
日用品から飲料水まで、いまではスマホから簡単にネット注文することができる時代になりました。コロナ禍において、こうしたネットショッピングのサービスは拡充し、利用者も増加の一途を辿っています。ただ、便利なネットショッピングを利用する背景には、日頃から数多の荷物を運んでくれている作業者がたくさんいることを忘れてはなりません。
2017年3月、東京都内の集配センター付近で、カゴ車の下敷きになり男性ドライバーが亡くなっています。男性が勤めた配送会社は、大手通販サイトの荷物を取り扱うことが多く、事故当日も飲料水が高く積まれたカゴ車を移送していたといいます。荷物が満載に積まれたカゴ車を別の拠点に輸送するため一人で搬入作業をしていたところ、何かの拍子にカゴ車のバランスが崩れたとみられています。
千葉県に住む女性(当時46)は、宅配便大手の協力会社でドライバーだった夫(当時51)が漏らした言葉を忘れることができず、思い出すたびに悔しさがこみ上げるといいます。「もうこんな仕事は辞めて、トラックから降りたい」。男性は日頃から配送業務の苦労と危険を感じていたのかもしれません。家族を残した男性の気持ちを思うと、安全に作業するためのルールの徹底がいかに重要だったかが分かります。
2.カゴ車について深く知る
カゴ車の原材料価格は新型コロナウイルスによる需給バランスの崩壊で高止まりしていましたが、ロシアのウクライナ軍事侵攻による資源エネルギー価格上昇で、カゴ車メーカー各社はそこから大幅な値上げを打ち出しています。樹脂パレットやキャスターといった付属する部材も値上げの一因となり、来年(2023年)はさらに値上がりする公算が大きいともいわれています。
それでもなお、カゴ車を採用した物流スキームを構築・継続する企業が多いのも事実です。トラックへの積載効率を算出しやすく、最大500kgもの荷物を積載できるマテハン機器となれば、人気の理由も分かります。ここでは、引き続きカゴ車を運用されるユーザー様のために安全に作業するポイントを列挙しつつ、カゴ車に替わるマテハン機器の候補についても取り上げてみたいと思います。
2-1.カゴ車で安全に作業するためのポイント
①段差/傾斜のある場所での取扱い
トラックの昇降機(テールゲートリフター)のように、段差や傾斜がある場所では事故が起きやすくなります。慎重な作業が求められます。また、カゴ車(ロールボックスパレット)が倒れそうになった時、倒れる方向に自らが入らないよう日頃から意識しておくも大切です。
出典:厚生労働省「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル」
②作業服/作業靴/保護具
擦り傷等の怪我を防ぐため、長袖・長ズボンの着用が必須です。シャツやズボンのすそが引っ掛からないよう留意し、暗い場所や夜間での作業においては、明るい色の作業服を身にまとうべきです。
出典:厚生労働省「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル」
つま先を保護する安全靴を履き、スリッパ・サンダル・ヒール靴での作業は厳禁。手や指の怪我を防ぐため軍手を使用することも効果的ですが、厚生労働省は、手のひらに滑り止め加工が施されたものを推奨しています。
③カゴ車(ロールボックスパレット)の基本操作と取扱い
人力運搬機と呼称されるくらいですから、人手で「押し」「引き」「よこ押し」するわけですが、各々の動きの特性と注意点を掌握しておく必要があります。三面囲われた柵を握り操作しますが、腕力だけに頼らず、膝を落として脚力を使うことも重要です。
・「押し」は、最も基本的な操作方法で、力を入れやすい姿勢で操作することができるため、長距離移動に適しています。但し、進行方向の見通しが悪いため、方向転換に注意を配り、目線高以上は荷物を積載しないことがポイントといえます。
出典:厚生労働省「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル」
・「引き」は、進行方向に対して作業者(操作者)が先頭に位置するため、周囲との接触リスクが低い操作方法です。スーパーマーケット等の店内(屋内)での移動でよく見かけることができます。但し、進行方向を確認しづらく、後ろ歩きでの移動になるため、長距離移動には不向きといわれています。
出典:厚生労働省「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル」
・「よこ押し」は、カゴ車(ロールボックスパレット)の重心に近い位置を押しながら移動するため操作性に優れます。前方の見通しが良いことも特徴といえます。但し、傾斜がある場所では操作性が落ちてしまいます。身体を捻った姿勢で操作することが多いため、初動時や停止時には力を入れづらい点は注意すべきといえます。
出典:厚生労働省「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル」
④複数人での作業実施
最大積載量が500kgほどに設定されているカゴ車(ロールボックスパレット)が多いことから分かるように、かなりの重量物が積載されることになります。日頃から、ひとりで無理して作業をせずに、複数人で作業することを意識しておくべきです。複数人で作業を行う場合、力の入れ具合がそれぞれ異なってきますから、お互いに声を掛け合って慎重に作業しなければなりません。特に、転倒したカゴ車を引き起こすときは、必ず複数人で側面を持って作業することをルール化しておく必要があります。
出典:厚生労働省「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル」
2-2.カゴ車の代替候補
カゴ車にも様々なサイズ展開がありますが、特寸台車でない限り、最小でも外寸幅は(W)800m/m以上あります。キャスター(車輪)を有しながらも、カゴ車ほど一度に大容量を積載できるマテハン機器はそう思いつきません。トラックへの搬入作業や配送先店舗周辺での屋外移動を考慮すれば、キャスターを有する機器がどれだけ重宝されているかが分かります。
ただ、弱点もあります。カゴ車は4輪ですが、重量物が載っていることもあり、なかなか段差を越えづらいと聞きます。この点、6輪カートは中央に配置されたキャスターが有効なため、女性でも扱いやすく、操作性を重視する企業や店内配送では多く採用されています。
また、カゴ車は、標準タイプ(前面開放)と観音開きタイプの2種類が流通していますが、一般的に使用されているのは前者です。この場合、袋物や重ね積みできない荷物は積載が安定せず、正面から荷物が飛び出してしまいます。重ね積みしやすい形状の荷物を積載したり、ストレッチフィルムで荷崩れ防止を講じたりと、運用面でも資材面でもひと工夫を求められる機会があることも事実です。
出典:MUJIN 物流ロボット相談室「カゴ車・カゴ台車とは?│用途や選ぶポイント、種類について解説」
米飯(お弁当・おにぎり)、惣菜、ベーカリー、精肉等、コンテナーに入れて配送する食材は、ドーリー台車(キャリー)に載せて輸送するケースが多いと思われますが、Φ150自在キャスターを有するカゴ車に比べると押し引きの機能性は劣ると言わざるを得ません。特に、屋外のアスファルト上ではカゴ車の方が重量物を輸送しやすいといえます。
現実問題、カゴ車に替わるマテハン機器は、なかなか候補が見当たりません。用途を限定して、取り扱いに注意すれば、ほかの台車でも輸送は可能でしょう。ただ、最大積載量や機動性を鑑みれば、替えが利かない存在であることは明らかです。代替品を探すことも一つの選択肢ですが、カゴ車の正しい使い方をマスターしてルール策定したうえで、いま一度、運用を見直してみてはいかがでしょうか。
3.見直したいカゴ車の保冷品輸送
カゴ車でチルド品や冷凍品を配送されている企業も少なくありません。管理温度と配送時間にも左右されますが、大容量であるが故、カゴ車で行う温度管理は決して簡単ではありません。
物流センター内の環境温度は何℃になっているか、仕分け作業から出荷まで待機時間がどれくらいあるのか、店舗配送してから冷蔵庫・冷凍庫へ保管してもらうまでにタイムラグはあるのか等々。配送条件や運用フローをしっかり把握したうえで、カゴ車にどのような保冷資材を装着すれば良いのか、適宜見定める必要があります。ここでは、カゴ車に装着できる大型の保冷カバーや保冷ボックスについて紹介してみたいと思います。
3-1.カゴ車用ネオシッパーM型
カゴ車で保冷品を輸送する際、最も多く使われているのがカゴ車の内側に装着する保冷カバーです。業界では、シッパーと呼称されることも少なくありません。環境温度(周囲環境)の影響を受けづらくなるため、保冷カバーの装着は有効です。
長距離輸送や温度維持に不安を覚える場合は、蓄冷剤を投入することも効果的です。但し、大容量のカゴ車ですから、蓄冷剤の投入量や配置については事前にしっかりとシミュレーションしておく必要があります。
私たちキラックスは、従来の保冷カバーを進化させた「新折畳みタイプ」を開発しました。折畳みと組立ての時間短縮を実現した「新折畳みタイプ」の保冷カバーは、カゴ車の保冷品輸送を一歩前進させました。作業効率の改善が期待できる新製品として方々から大変多くのお問い合わせをいただいております。
◎ネオシッパーについての詳細はこちらでご紹介!
キラックス製保冷ボックス『ネオシッパー』サイズや特徴を1から解説!
3-2.カゴ車用ネオシールド(フルサイズ)
冷凍食品やアイスクリームのように溶けてしまうと製品として成立しなくなる食品や、夏場における長時間配送等は、保冷カバーでは管理温度が難しいケースも散見されます。そうした場合は、押出発泡ポリスチレンフォームを採用した保冷ボックスがお勧めです。保冷カバーよりもコストはかかりますが、断熱材の性能を向上させることで温度管理の不安を一気に解消します。こちら大型の断熱ボックスは、ご使用のカゴ車サイズに合わせて、サイズ・仕様を設計しています。作業内容も反映した最適スペックでのご提供が可能です。
◎ネオシールドについての詳細はこちらでご紹介!
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3-3.カゴ車用ネオシールド(1/3サイズ)
前述のようにカゴ車の有効内寸を丸々カバーしたフルサイズのほかに、カゴ車の有効内寸に対して凡そ1/3サイズに設計した保冷ボックスも有効的です。当該保冷ボックスはカゴ車の内側に装着しません。仕分け・ピッキング作業を終えた保冷ボックスから、カゴ車に順次積載していきます。保冷ボックスを3段積みすると丁度カゴ車の高さが埋まるイメージです。
高さ1/3程度に仕切ることで、配送店舗別に保冷ボックスを整理できるようになったほか、内寸を小さくしたことで温度管理がしやすくなりました。カゴ車サイズに合わせたサイズ設計で、カゴ車の運用をサポートします。特に、冷凍品の配送で多く採用いただいている製品です。
4.まとめ
このように今回は、カゴ車をやめたい理由について探ってみました。事故リスク・代替品の機動性・値上げに対する懸念・温度管理に対する不安等々、カゴ車が敬遠される理由は確かに存在します。ただ、カゴ車の利便性についても、もっと理解すべきですし、正しい使い方を知って運用ルールを策定すれば、課題は一つずつ解消していくことができます。
何故、カゴ車をやめたいのか?やめたい理由をよく精査して、一度、解決策を考えてみてはいかがでしょうか。カゴ車の修理、カゴ車の保冷品輸送、カゴ車用の透明カバー(防塵カバー)等々、私たちキラックスは、カゴ車を運用する企業をサポートしてまいります。カゴ車の運用でお困りごとございましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
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