新しい物流のあり方を考える!ホワイト物流のこれからとは?

業界あれこれ
2022.08.03

私たちの生活を支えている物流。必要なものを、必要な所へ、必要なだけ、届けます。日本では物流のほとんどがトラック輸送。しかし、そこには様々な問題があり、健全とは言い難い業界となっています。その物流を担うトラックドライバーがサスティナブルに働くことができる環境を作ることがホワイト物流。今回はホワイト物流とは何かを考えてみたいと思います。

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【目次】
1.ホワイト物流とは
 1-1ホワイト物流のメリット
 1-2.ホワイト物流のデメリット
 1-3.ホワイト物流との向き合い方
2.ホワイト物流の背景:物流業界における働き方の現状と課題
 2-1. 長時間労働・低賃金
 2-2. 少子高齢化、運転手不足
3.ホワイト物流推進運動
 3-1. ホワイト物流推進運動とは
 3-2. ホワイト物流推進運動の目的
 3-3. ホワイト物流推進運動の効果
4.ホワイト物流の取り組み事例
 4-1.ホワイト物流の賛同企業
 4-2.取り組み事例
5.まとめ

1.ホワイト物流とは

トラックドライバーが長い間、長時間労働や過酷な労働環境、低賃金などで苦しんでおり、物流業界はブラックな業界と言われてきました。一方ホワイト物流とは、それら多くの問題を改善し、トラックドライバーをより良い労働環境に導く物流のあり方です。

1-1ホワイト物流のメリット

ホワイト物流には、以下のようなメリットがあります。
・トラックドライバーの負担を減らすことにより、長時間労働を無くし働きやすい環境を構築することができる。
・トラック業者側の生産性の向上にもつながり、業績もアップが見込める。
・物流機能を維持することにより、日本の産業の成長を促す。
・賛同企業として国土交通省から公表されれば、企業のイメージ戦略になる。
・物流の効率改善により二酸化炭素の排出量を削減して、SDGsに貢献できる。

1-2.ホワイト物流のデメリット

ホワイト物流にはメリットだけでなく、やはりデメリットもあります。
・搬送を依頼する企業からすれば、運送の契約の見直しがなされ、輸送コストが上昇してしまう恐れがある
・輸送の手段の変更が行われ、荷物が届くまでの日数がかかってしまうなど、サービスレベルの低下を招く恐れがある。
・コスト重視の運送会社からすれば、取り組みに応じてくれない可能性がある。
・競合他社の運送会社がホワイト物流に取り組まず、長時間労働や低賃金を継続し更なる値下げを行った場合、価格競争に負け、取引が減ってしまう場合がある。

1-3.ホワイト物流との向き合い方

ホワイト物流にはメリット、デメリットのどちらもあり、物流に関わる企業はどのように向き合うべきか、考えていく必要があります。しかし、ホワイト物流を行わない場合さらなる環境悪化に繋がる可能性も考えられます。
・トラックドライバーの労働環境が悪いまま改善されないので、トラックドライバーのなり手が減って人手不足が年々さらに深刻化するので、更に労働環境が悪化してしまう。
・物流機能が縮小し、物流の混乱を招いてしまう。
・物流機能の衰退によるサービス低下。更には日本の産業の停滞にもつながってしまう。
・消費者からみれば、日常購入する商品の選択肢が減り、希望の日時に商品が届かなくなってしまう。
これからの物流業界において、ホワイト物流を目指すことは避けて通れないものとなっているのではないでしょうか。

2.ホワイト物流の背景:物流業界における働き方の現状と課題

トラック輸送業者の抱えている問題は何かを、考えてみたいと思います。

2-1. 長時間労働・低賃金


トラック運転手の労働時間は、全産業平均より約2割長いと言われています。その理由は、長時間の待ち時間・荷役時間です。
荷物を受け取る先での待ち時間と荷役時間。要するに荷物を積み込みに行った先で、トラックが何台も待っていて順番待ちをしたり、積み込む荷物が用意されていなかったりする時間。また納品先でも荷下ろしのためにトラックが何台も並んでいたら、待ち時間が発生してしまいます。
荷待ち時間がある運行の拘束時間の平均は13時間27分、無い運行では11時間34分となり、約2時間の違いがあります。普段でも拘束時間が長いのに、荷待ち時間があれば、更に長くなってい
るのが現状です。
賃金に関しても、年間所得は全産業平均と比較して、大型トラックドライバーで約1割、中小型トラックドライバーで約2割低くなっています。
(国土交通省・厚生労働省「トラック輸送状況の実態調査」(令和3年)より)

2-2. 少子高齢化、運転手不足

トラック運送事業では、全産業平均より若年層の割合が低く、高齢層の割合が高いです。
全産業では40~54歳が35.1%、15~29歳が16.1%の割合に対し、トラック運送事業では40~54歳が45.3%、15~29歳が9.4%の割合となり、40~54歳が10ポイントほど高くなり高齢化が進ん
でいます。
道路貨物運送業における自動車運転従事者の推移を見ても、トラック運転者はピーク時である平成7年の980千人から平成27年には767千人となり、20年で213千人(約20%)の減少となって
います。
また、有効求人倍率では、全職業(パート含む)が1.38倍に対し、貨物自動車運転手(パート含む)は2.73倍で全職業の倍の人材が不足しています。
(国土交通省「トラック運送業の現状と課題について」(令和2年)より)

3.ホワイト物流推進運動

近年顕著なトラック運転手の不足に対応し、国民の生活や企業の活動に必要な物資の安定的な搬送を確保するとともに、日本経済の成長を促すことを目指すのが「ホワイト物流」推進運動です。

3-1. ホワイト物流推進運動とは

物流の問題を解決するため、2019年4月に国土交通省が主体となり開始したのが「ホワイト物流推進運動」。同年5月13日には全国約6,300の企業に対し、運動への参加を要請する文章が送付されましたが、多くの企業がこの趣旨に賛同・参加を表明しています。
運輸・運送・郵便・倉庫業はもちろんですが、採石業や建設業、電気・ガス・水道業、情報通信業など多岐にわたる企業・団体がこの運動に賛同しています。このことからも、いかにホワイト物流がステーブルな国民生活とサスティナブルな経済成長に必要なものなのかを物語っています。

3-2. ホワイト物流推進運動の目的

ホワイト物流推進運動とは、国土交通省が掲げる運動であり、荷主だけでなく物流に関わるすべての関係者が連携して相互に改善を提案し、協力して実現を目指す取組を推進する国民運動です。
目的としては次の2点が挙げられます。
①トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化。
②女性や60代以上の運転者等も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現。
トラックドライバーの労働環境改善、賃金アップ、トラック運転手の人材確保など、ドライバー擁護と共に、日本の経済、国民の生活を支えることを目的とします。

3-3. ホワイト物流推進運動の効果

物流に携わるすべての関係者が問題意識を持ち、お互いに協力することにより、以下の効果が期待できると考えられています。
・企業間の連携や予約受付システムの導入など、各業界の商慣行や自社の業務プロセスの見直しによる生産性の向上。
・集荷先や配送先の集約など物流の効率化や、船舶や鉄道へのモーダルシフトによる二酸化炭素排出量の削減。
・事業活動に必要な物流を安定的に確保・提供し、企業の社会的責任の遂行など。
モーダルシフト

4.ホワイト物流の取り組み事例

ここでは、実際にどのようにホワイト物流推進運動に取り組んでいるのかを見てみましょう。

4-1.ホワイト物流の賛同企業

2019年5月13日に約6,300社に参加を要請する文章が送付されました。現時点での賛同企業数は1,429社です。
業種は29業種と多岐にわたり、中でもやはり運輸業、郵便業が最も多く775社、次に製造業が390社で続いています。
(令和4年6月30日時点。「ホワイト物流」推進運動ポータルサイトより)

4-2.取り組み事例

それでは、現在ではどのような取り組みがなされているのでしょうか。具体的に見てみましょう。
①企業を超えたITシステム導入による待ち時間の短縮
荷主企業が各トラックバースの荷役の予定時間を事前に設定し最適化する「予約受付システム」により荷待ち時間の大幅な短縮ができました。
荷主側もシステムの導入で倉庫作業が効率化され、時間や人員の削減によるコストダウンや、商品・サービスの円滑な流通による生産性の向上などのメリットが生まれました。
②パレットによる肉体的負担の低減
大量の荷物を手作業で積み下ろしすることは、トラックドライバーにも発送作業員にも肉体的な負担がとても大きい。この現状を改善するために一部企業ではパレットを活用し、フォークリフトなど補助機器を利用して作業負担の軽減、時間短縮ができました。

③幹線輸送部分と集荷配送部分の分離
一人のトラックドライバーが複数の場所で集荷した後、関西・関東方面などの長距離運転をして複数の場所の配達をしていたため拘束時間がとても長くなっていました。
そこで、集荷の担当と長距離輸送担当、配達の担当を分業することで、ドライバー一人当たりの拘束時間を大幅に短縮することができました。

5.まとめ

ホワイト物流推進運動の取り組みは、トラックドライバーを守ることによって物流を活性化し、日本経済の発展と国民の生活を繁栄させます。
更に、ドライバーの負担軽減のための効率化や管理システム導入により、自動車の燃費改善などCO2排出量削減につながりSDGsの貢献にも寄与します。ホワイト物流が世界の未来を守ると言っても過言ではありません。

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