食品業界の置き配

食品業界の「置き配」/留め置き・置き納品に潜む課題とは

業界あれこれ
2022.10.28

「置き配」がニューノーマルになった決定的な理由はどこにあったのでしょうか?また、「置き配」に潜むリスクや課題として、どんなことが挙げられるでしょうか?
新型コロナウイルスが流行しはじめた2020年前半、BtoCにおいて「置き配」は、感染対策の一つとして一気にニーズが高まりました。荷物を配達する側も受け取る側も、対面での接触を出来る限り減らしたいという狙いがあったからに違いありません。
いまや、一般消費者への荷物の配送においてスタンダード化した「留め置き」「置き納品」ですが、食品物流業界では、感染が拡がる前から「置き配」は当たり前の納品スタイルでした。
ドライバーの生産性向上を重要視する食品物流業界では、深夜から早朝にかけてドロップ納品していくことも珍しくなく、それが故、スタッフ不在の店舗への納品や、空調が利いていないスペースやバックヤードへの納品も日常的に行われています。
(※ドロップ納品:次から次に荷物を配送していく様から、物流業界では「置き配」を「ドロップ納品」と呼称することがあります)
今回は、「留め置き」「置き納品」の利便性やメリットを解説し、リスクや課題解決策についても紹介していきたいと思います。

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―目次―
1.置き納品(置き配)のメリットとは?/便益・利点
1-1.置き納品(置き配)のメリット-BtoB編
1-2.置き納品(置き配)のメリット-BtoC編
2.置き納品(置き配)のデメリットとは?/リスク・不安
2-1.置き納品(置き配)のデメリット-BtoB編
2-2.置き納品(置き配)のデメリット-BtoC編
3.温度管理とセキュリティ面への不安
3-1.保冷カバー(遮光カバー)の採用
3-2.保冷ボックス(断熱ボックス)の採用
3-3.セキュリティ対策
4.まとめ

1.置き納品(置き配)のメリットとは?/便益・利点

置き納品/玄関前
配達員やドライバーからすれば、相手ありきになる対面納品は、行動予定が自分主導ではなくなります。非対面であれば、自分主導でスケジュールすることができるばかりか、手間や時間を圧倒的に省くことができるため、負担軽減や効率化に繋がります。
配達員やドライバーは余り多いほどの人材ではありません。人材不足に悩む企業は多く、限られた人材でいかに効率良く配送していくか、企業努力を重ねています。より多くの配達先へ(店舗へ)、いかに短時間で効率良く納品していけるか、このことを追求している荷主側からすれば「置き納品」は、いまや常識ともいえるでしょう。

また、ネットショッピングや通販を利用する機会が増えた消費者からしても、受け取りのために行動や時間の制限を受けない「置き納品」は大きなメリットがあります。EC業者からしても、消費者の受け取りストレスの低減は、これまで利用を控えていた層を取り込むことができるため、確実にメリットがあるといえます。配送業者(宅配業者)からしても、再配達問題やCO2排出問題への有効な取り組みといえますから、間違いなくメリットは存在します。
つまり、「置き納品」は、売り手(荷主)/買い手(配送先)/配送業者(物流会社)の3者にメリットがある三方良しの配送モデルといえます。

1-1.置き納品(置き配)のメリット-BtoB編

食品の深夜配送

BtoBとなる食品物流業界の配送は、交通量の少ない深夜から早朝にかけて行われることが一般的といえます。日配品のように毎日配送される食品から、曜日を限定して配送される食品まで、品目は様々ですが、スーパーであれ外食チェーンであれ、1台のトラックで効率良く短時間で1店舗でも多く納品したいという概念は共通しています。
深夜から早朝にかけて納品する場合、一部コンビニや外食チェーンを除き、納品先の店舗は営業時間外であることがほとんどです。スタッフ不在の店舗に納品しようとすれば、従来はセキュリティロックを開錠し、指定された冷蔵庫へ格納するところまでがドライバーの作業でした。

大量に積載した食品・食材を次々と店舗にドロップしていくことができる「置き配」の最大のメリットは、作業時間の短縮とドライバーの負担軽減といえます。

1-2.置き納品(置き配)のメリット-BtoC編

宅配ボックス

BtoCにおける食品配送の場合、ネットショッピングや通販で手軽に頼んだ食品でも、対面で受け取りすることになれば、消費者の在宅が必須になります。便利だった買い物のはずが、面倒に感じてしまうようでは、サービスは拡充していきません。
日本郵便やヤマト運輸をはじめとする配送業者から、Amazonや大手ネットスーパーの配送業者まで、いまでは当然のように「置き配」に対応しています。宅配ボックスが設置されていない先でも、「メーターボックス」「自転車かご」「車庫」「玄関先」「建物内受付」といった場所から指定しておくこともできるようになってきました。

宅配便の再配達率が問題視されていた昨今において「置き配」は、受け取りのストレスが緩和された消費者にとっても、何度も訪問する手間が改善された配送業者にとっても、双方にメリットがあるといえます。くわえて、ドライバーの労働環境の改善や人材不足解消への貢献は、SDGs目標達成と同じ方向を向いていますし、車両削減においては、CO2問題をはじめとする環境面への配慮を窺い知ることができます。

2.置き納品(置き配)のデメリットとは?/リスク・不安

留め置き納品

一方で、食品の「留め置き」「置き納品」には温度管理の不安が付きまとうことも事実です。商品ごとに適切な管理温度が設定されていますから、例えば、夏場に長時間放置してしまえば品質や鮮度を大きく落とすことも十分に考えられます。
ECサイトから手軽に注文できて、自宅を留守にしている日中でも受け取ることができれば、消費者のニーズは高まり、それに応えようとする業者の思惑は一致します。ただ、当然ながら、それは品質を保持できている食品であり、鮮度を保持できている食材であることが大前提での話です。

冷蔵・冷凍の機能がついた一部宅配ボックスを除いて、「留め置き」「置き納品」は、空調が利いていない環境下や軒下のスペースに置いて、それを納品と見なしているわけですから、当然、周囲環境と同じ温度下で保管されることになります。
商品の管理温度を逸脱してしまえば、見た目には変化なくとも傷むこともありますし、溶けて形を崩してしまう商品もあります。「置き配」がニューノーマルとなり、このまま普及進行して当たり前のインフラと化しても、食品の安全を保持できないようなら、それは諸刃の剣になりかねません。

2-1.置き納品(置き配)のデメリット-BtoB編

冷蔵車

スーパーや外食チェーンの店舗に食品を納品するBtoB配送が、BtoCと明らかに違う点は、その納品量です。大量の食品や食材を納品しても、仮にそれが商品として販売できなくなってしまえば、損失は多額です。
外食チェーンにおいては、決められた食材が準備されていなければ、注文を受けた食事を提供することができません。即ち、納品された食材の一部が傷んでいれば、再配達という選択肢を選ばざるを得なくなってしまいます。一度の配送で納品を完了させても、結局、再配達になってしまえば、その配送コストは無駄になってしまいます。

また、品目数が多岐にわたるため、管理温度も当然ながら様々です。異なる管理温度の食品・食材を一度にまとめて納品する場合、どの食品の管理温度を主軸にして配送すれば良いのか、葉物や青果といった傷みやすい食材はどのようにカバーしてあげれば良いか、基準とすべき温度にも頭を悩ませます。
スーパーや外食チェーンの店舗配送は、ほとんどがトラックでの納品です。例え、余裕をもった配送スケジュールを組んでいても、事故や天気次第では、道路は一瞬で渋滞を引き起こします。配送スケジュールが簡単に崩れてしまうことも珍しくないため、”もしも”に備えて、さらに2~3時間の余裕をみて配送スケジュールを組む企業も多いと聞きます。そうなると、置き配してからスタッフの受取・保管のタイミングも変わってしまいます。季節の変化と予期せぬトラブルに備えることは、物流スキームを策定するうえで欠かすことのできないリスクヘッジといえるでしょう。

2-2.置き納品(置き配)のデメリット-BtoC編

ラストワンマイル配送

BtoCにおける食品配送は、BtoBに比べて配送先(件数)が圧倒的に多いことが特徴です。1件あたりの納品量は少ないですが、配送前にどれだけ予冷をしていても、コールドチェーンを構築していても、荷物量が少ないが故、置き配してから外気温に熱を奪われる可能性が大きいといえます。置き配してから消費者が受け取りするまでに食品の温度は推移しやすく、ダメージを受けやすくなってしまいます。
車庫や集合玄関先への置き配であれば、直射日光を避けられるかもしれませんが、配送先(消費者宅)すべてが照射を回避できるわけではありません。周囲環境温度は、温度管理を左右する一番の要因にほかなりませんが、日差しを浴び続けることも食品を一時保管するうえで大きなリスクといえます。
気温が同じでも日向と日陰で体感温度が異なるという体験をした方も多いのではないでしょうか。そのような現象を放射伝熱(輻射伝熱)といいますが、同じ気温でも照射があるか否かで、食品の保管状況は影響を受けますので、置き配する食品は遮光する必要があると考えられます。

また、宅配ボックスのように施錠できる設備以外への置き配はセキュリティ面に不安が残ります。悪意ある人間なら簡単に悪戯できてしまう環境にあるため、配達から受取まで自分以外の人間が触っていないことを確認できるチェック機能を希望する消費者も多いといいます。最近では、置き配完了時の写真がスマホに送られてくるサービスも広まりつつありますが、盗難やその他トラブルと並行して、食品への悪戯は絶対に回避しなければなりません。

3.温度管理とセキュリティ面への不安

オリコン用シッパー/ハーフサイズ

「置き配」に限らずとも、食品や食材の配送や一時保管には、アルミ蒸着シートやアルミ蒸着フィルムが頻繁に用いられます。アルミ素材が採用される一番の理由は「放射率」です。放射率は、物体の材質、表面の状態(汚れ・酸化等)、表面の形状(粗さ・平滑性・凸凹等)、温度により変化するほか、波長や放射角度によっても変化するといわれています。
一般的に光沢のある金属面は放射率が小さいとされ、表面が汚れたり酸化すると放射率が大きくなると報告されていますが、弁当等の人力販売を行う行商従業者が使用する運搬容器に遮光性を求めるのにも、そのような背景があるといえます。また、アルミ素材を用いた保冷カバーや保冷ボックスは、清掃や拭き掃除がしやすいため、メンテナンスのうえでも適性があるといえるでしょう。

届ける側にも受け取る側にも不安がある「置き配」の温度管理とセキュリティ対策。採用するには確かな理由があったアルミ蒸着生地を活かしつつ、次の通り、3つの課題解決策を紹介してみたいと思います。

①保冷カバー(遮光カバー)の採用
②保冷ボックス(断熱ボックス)の採用
③セキュリティ対策

3-1.保冷カバー(遮光カバー)の採用

置き配用カバー

「置き配」に使用する資材は、できるだけ安価に、できるだけ効果のあるものを採用したいと考えるのが一般的です。発泡スチロールや段ボールの使用する事例も多く見受けられますが、それだけでは遮光性が保てません。そのため、留め置きする際は、保冷カバー(遮光カバー)の使用が有効的と考えられています。保冷カバーで覆ってあげる、そのひと手間で照射対策を講じることができます。

ネオシッパーK型

「置き配」する場所が、雨風を凌げる場所とは限りません。屋根や(ひさし)がない場所への放置も十分に考えられます。保冷カバーは、雨除け・埃よけ(防塵)としても活路を見出します。また、最近では、さらに納品する食品・食材にブラインドを下す意味で、目隠しとして使用される例も増えています。

尚、未使用時の形状にも着目したいところです。使用しない時はコンパクトに折り畳むことで、スマートに保管して、効率良く回収できるカバーが好まれる傾向にあります。

 

3-2.保冷ボックス(断熱ボックス)の採用

業務用保冷ボックス

コロナ禍にあって外で食事する機会へ減り、冷凍食品の需要が急増しました。現在、一般家庭向けでも業務用でも相当量の冷凍食品が流通しています。冷食やアイスの配送、そして置き配する場合、高性能断熱材が用いられた保冷ボックスが効果的です。

置き配用保冷ボックス

冷凍食品やアイスといった-18℃以下の管理がセオリーとされるアイテムは、ネットスーパーの取扱商品から除外されることも多く、敬遠されがちです。ただ、そういったアイテムを要望する消費者ニーズが減退することはありませんから、ネットスーパーを運営する企業や、その配送を担う企業は、今後こういった要望に応えていかなければなりません。

蓄冷剤いろいろ

一般的に流通している蓄冷剤は融点0℃グレードですが、冷凍品、チルド品、そして青果品や葉物野菜の管理まで、適宜、適正温度の蓄冷剤を用いることで、食品や食材の品質はしっかりと保持することができます。また、置き配してから消費者や店舗スタッフが受け取りするまでの放置時間が長くても、こうした蓄冷剤と高性能断熱ボックスを併用することで、外気温に熱を奪われることなく、適温を維持します。「置き配」で温度管理するとなれば、無電源であることが要件ですが、断熱ボックスはそれに応える最適資材といえます。

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3-3.セキュリティ対策

セキュリティ対策(置き配用)

悪意ある人間からすれば、玄関先に納品された食品の包装を解くことは容易ですし、保冷カバーや保冷ボックスを破壊してでも悪戯をすることは簡単だと思います。盗難にしても同じことがいえます。
悪戯や盗難を完璧に防ぐことは難しいため、優先すべきセキュリティ対策として、まず「開封確認」を提案します。これは、ドライバーが配達(置き配)してから消費者が受け取るまで一度も開封されていないことを確認する方法です。次のような流れです。

・配達時、ドライバーが食品をカバーやボックスで覆います。
・次に、封緘(ふうかん)止めやリングスライダーに結束バンド(インシュロック)を通します。
・受け取りをする消費者が、その結束バンド一度も開封されていないことを確認すれば、食品の安全を裏付けることができます。

結束バンドで封をする場合、錠前を使用しないため鍵を共有する必要がなく、錠前の劣化を心配する必要もありません。また、鍵紛失や破損といったトラブルに見舞われることがない点もメリットといえます。

盗難対策については、「施錠機能がある宅配ボックスを利用する」「放置時間をできるだけ短くする」「住所内(敷地内)の分かりづらい場所を指定する」等、そもそも決められた約束事で対処することが有効です。ただ、食品を覆うことができる遮光シートや保冷カバーと住居設備の一部をワイヤーロック等で繋ぐことも、比較的、簡単に行える盗難対策の一つといえます。

4.まとめ

今回は、いまやスタンダード化した食品の「置き配」について解説をさせていただきましたが、都心部の飲食店はバックヤードが狭小な店舗も多く、宅配ボックスが設置されていない集合住宅では「置き配」に悩まれる方も多いと思います。
生鮮食品の置き配サービスがさらに拡充・安定していくよう、私たちは、最適資材の開発を続けてまいります。キラックスは、留め置き(止め置き)・置き納品に有効な保冷カバーや保冷ボックスを提供させていただくことで、サプライチェーン全体の生産性向上に寄与することを目標とし、物流業界の一翼を担っています。

企業の数だけ、「置き配」のパターンがあります。「置き配」の数だけ、資材の種類があります。管理温度はもちろんのこと、時間・食品・サイズ・ご予算に応じて、オンリーワンのご提案でお応えしてまいります。是非とも、お気軽にお問合せください。

キラックス理念

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