ハム保管の適性温度とは?

ハムは常温倉庫で保管しておけば大丈夫?適正温度と物流の要点を解説

私たちの食生活において加工食品はなくてはならない存在となっています。
なかでも、コロナ禍により消費支出の形態が変わり、以前に増して重宝されたのが、肉加工品であるハムやソーセージです。では、ハムやソーセージの適切な保管方法や輸送方法とはいったいどのようなものなのでしょうか?
現在、日本では、イタリアからの豚肉・プロシュート・パルマ・サンダニエーレ生ハム・コッパ・パンチェッタ・サラミ等を含む豚肉加工品全般の輸入を停止しています。これは、イタリアで蔓延した家畜伝染病の影響です。いわゆる、アフリカ豚熱です。
イタリア産の生ハムが出回らなくなったことで、ファミリーレストラン「サイゼリヤ」では、プロシュート・熟成ミラノサラミ等、人気メニューの提供をやむなく中止しています。アフリカ豚熱の発生による輸入停止以降も、「サイゼリヤ」では在庫で賄っていましたが、遂にその在庫も尽きてしまったといいます。
お歳暮をはじめとする贈り物の定番格であり、業務用としても相当量が流通しているハムソーですが、今回はハムを中心とした肉加工品がどのようにして保管され、そして流通しているのかについて紹介していきます。

―目次―
1.ハムの定義とは何?
 1-1. ハムの種類いろいろ
 1-2. ハムの包装方法
2.ハムの管理温度とは?
 2-1. ハム保存の適性温度と傷みについて
 2-2. ハムの流通市場と輸送温度について
3.流通と保管におけるハムの適性管理
 3-1. 数多の採用実績「ネオシッパー」
 3-2. 蓄冷剤(保冷剤)の投入
4.まとめ

1.ハムの定義とは何?

一概にハムといっても様々な種類があります。種類によって包装方法は異なりますし、適正な保管温度もそれぞれです。いまでは、鶏肉ハムや魚肉ハムも広義で「ハム」に括られているかもしれませんが、もともとハムとは豚肉を塩漬けにした加工肉のことを指します。

生ハムとサラミほか

塩漬けにするまでの工程は同じですが、それ以降の処理には加熱・煮沸・乾燥・燻製・醗酵といった異なる製法が存在します。そのため、塩漬け以降の工程で、ハムの種類が分けられていることがほとんどです。
生ハムといえば、どんぐりの実を食べさせることで知られるイベリコ豚が有名ですが、生ハムは塩漬けのあとに乾燥~醗酵、もしくは燻製したハムです。まずは、簡単にいくつかハムの種類を挙げてみたいと思います。

1-1.ハムの種類いろいろ

・ロースハム
最も一般的なハムで、豚ロース肉を塩漬け・燻製・加熱したハムです。適度に脂肪を含んでいるため、旨味を感じることができます。柔らかな食感ときめの細かさが特徴です。

・ボンレスハム
豚のもも肉から骨を抜いて、塩漬け・燻製・加熱したハムです。その名の通り、ボーン(骨)レス(なし)のハムを指します。脂肪が少なくあっさりとした味わいで、ヨーロッパでは最もポピュラーといわれています。

・骨付きハム
豚のもも肉やすね肉を骨がついたまま成型して加工したハムをいいます。加熱加工のほかに、低温で長時間乾燥させて燻製したものがあります。見た目のインパクトから贈り物やパーティ用として用いられます。

・ショルダーハム
骨抜きした豚の肩肉を塩漬け・燻製・加熱加工したハムです。比較的脂肪が少なく赤肉が多いハムですが、塩分控えめであることもショルダーハムの特徴です。

・プレスハム
豚肉以外の肉も混ぜて作られることもある日本独自のハムです。塩漬けにした豚肉に小麦粉や調味料と一緒に練り合わせて成型して燻製します。ソーセージに近い製法が特徴。食材が少なかった戦後の時代がプレスハムの普及を後押ししたともいえます。

1-2.ハムの包装方法

会員制の大型倉庫式スーパーで生ハムの原木を購入したとしても然り、通常は、消費者が購入するハムも業務用で流通するハムもフィルムで包装されていることが一般的です。ここでは、次に、ハムの包装方法にはどのようなものがあるのか、その種類を挙げてみたいと思います。

・真空包装
ガス遮断性の優れた包装フィルムを用います。フィルムとハムをより密着させるため真空包装機で空気を抜いた後、フィルムの開口部をヒートシール(熱溶着)して、ハムを真空パックします。真空引きすることで、空気の絶対量を減らすことはできますが、空気がすべて無くなるわけではなく、僅かな空気(酸素)は残るといわれています。ハムの真空包装
深絞り包装
ボトム材を真空成形により内容物に合わせた凹みを作り、その中にハムを入れ、その後にトップ材が上からシールされ、カットされる包装形態です。ハムの包装形態で最もよく見かけられる包装といえるかもしれません。ハムの深絞り包装

・ロケット包装
チューブ状のフィルムにハムを入れて筒状になった状態で、両端をクリップで止めて絞ります。ハムや魚肉ソーセージのほか、もやし、山菜、蒟蒻(こんにゃく)、野菜の水煮などの惣菜業界でも幅広く用いられる包装形態です。
ハムのロケット包装

・ガス置換包装(MAP包装)
真空包装は空気を減らすため、パッケージがシュリンクします。簡単にいえば、包装フィルムが縮みます。それに対して、ガス置換包装(MAP包装)は空気の容量を減らさないのでパッケージがシュリンクすることはありません。食品専用ガスを充填してシールすることでガスを封じ込めて、トレイ内の環境を整え、酸化や菌の増殖を抑制します。
ハムのガス置換包装
画像出典:輸入食材などの業務用食材卸専用の通販サイト「マームアラモード」

2.ハムの管理温度とは?

お歳暮などでハムをもらう機会も多いかと思いますが、贈答用のハムは真空包装になっているものが多く、一見、常温で保管できそうな雰囲気を醸し出しています。ところが、よく見てみると「要冷蔵」の表記があるものがほとんどです。
考えてみれば、スーパーで販売されているハム・ソーセージは、リーチイン型の冷蔵ショーケース等に陳列されています。ギフトでハムが自宅に届く時も、発送にはクール便が使われていますし、常温での持ち運びや輸送は、できるだけ避けるよう注意喚起されているのが現状です。

冷蔵ショーケースでの買い物
真空パックされたハムだから常温保存が利くと安易に考えてはいけません。ハムの常温保管は1~2時間程度を上限とし、基本は冷蔵環境で保管するのがセオリーといえるでしょう。では、一体、「要冷蔵」とは、いったい何℃くらいを指しているのでしょうか?

2-1.ハム保存の適性温度と傷みについて

ハムやソーセージは、食品衛生法で商品の製造方法や特徴に合わせた保存方法が定められています。一般的なハムやソーセージは+10℃以下で保存。ローストビーフや生ハムは+4℃以下で保存。サラミやビーフジャーキーは高温多湿を避けた冷暗所で常温保管します。
但し、各商品には、それぞれ保存に適した温度が記載されていることがほとんどですから、その記載に従うべきといえるでしょう。「要冷蔵品」を常温で保存していた場合、賞味期限内でも傷む場合が考えられます。ハムが傷んだ場合、見た目だけでなく、臭いや味にも違和感が生じます。主に挙げられる傷みの特徴は、次の通りです。

ハムが傷んだ時の特徴
・糸を引いている
・ぬるぬるしている
・ネバネバしている
・乾燥して乾いている
・カビが生えている
・酸っぱい臭いがする
・変色している

先述の通り、ハムの適正な管理温度は商品ごとに異なります。冷蔵保存を基本とし、推奨されている管理温度で保存するようにしましょう。常温保存で傷みが生じてしまったハムを口にしないことは当然ですが、一度開封したハムは、空気に触れることで酸化したり雑菌が付着するため日持ちしません。開封後は必ず冷蔵保存し、目安となる開封後の日持ちを確認しておきましょう。

2-2.ハムの流通市場と輸送温度について

畜産加工品といわれるハムやソーセージは、市販用として、食品スーパーや総合スーパーで販売されるほか、コンビニや生鮮品を取り扱う小売店・ディスカウントストアでも多く販売されています。業務用としては、ファミレスやファストフードといった外食チェーンはもちろんのこと、学校給食や社員食堂、そして弁当や総菜を取り扱う中食ベンダーにも販売されることで、相当量が流通しています。
市販用も業務用も、そのほとんどがチルド温度帯で流通していますが、業務用に限っては、一部、冷凍で流通するものもあるようです。いずれにしても、ハムが常温帯で流通することは考えにくいと推察されるため、流通過程において常温倉庫で保管されることは極めて稀といえるでしょう。
現在のハム・ソーセージ市場は、人口減少の影響を受け続け、これまでの需要と供給のバランスが崩れはじめているといいます。原料や飼料の高騰が続き、物流コストと人件費もアップしたことで、製造元メーカーは、利益を削りながらシェアを維持し、さらなる企業努力で販路の拡大を目指しています。大手であれば、中国や東南アジアに生産拠点を構えている企業も多いため、為替や輸送における燃料費等の影響も避けられない状況です。

海外の飼料タンク

参照:畜産加工品(ハム・ソーセージ類)業界の主な市場動向や市場規模

3.適性温度でハムを流通・保管するには?

食品衛生法では、冷蔵帯は+10℃以下、冷凍帯は-15℃以下と定められています。JAS法では、チルド帯を+5℃と定めています。しかし、食品の規格基準が定められている食品は、その基準に合う方法で保存する必要があるため、食品ごとに規格基準に適当な保存方法が記載されています。そのため、前述の通り、商品(ハム)に記載された保存方法に従うべきといえます。
ここでは、ハムを適性温度で流通・保管するために有効な資材について紹介していきたいと思います。ハムに限った要件ではありませんが、食品物流のコストカットと合理化は、どの企業にとっても至上命題であるため、コスト面と運用面も考慮しながら列挙していきます。

3-1.数多の採用実績「ネオシッパー」

◎「ネオシッパー」について詳細はこちら
キラックス製保冷ボックス『ネオシッパー』サイズや特徴を1から解説!

環境温度の影響を受けづらくするため、保冷カバーで覆うことは有効策といえます。保冷カバーは、温度維持を助けるだけでなく、厚みのある断熱ボックスに比べて取り扱いしやすい点も特長です。折り畳めば回収効率はアップしますし、省スペース化の実現で保管場所もとりません。まさしく物流の合理化に一役買ってくれる存在です。

ネオシッパーK型

ポイントとなるのは、流通過程におけるハムの荷姿です。大方、段ボール単位で輸送されることがほとんどかと思われます。となれば、段ボールをそのまま覆うことが出来る保冷カバーを準備したいところです。キラックスの「ネオシッパー」は、サイズはもちろんのこと、持ち手や開閉方法まで運用面に合わせた特注設計でお応えしています。最近では、カゴ車対応のネオシッパー「ハヤブサ」も高評をいただいています。

ネオシッパーM型(ハヤブサ)
納品先や品目が記載された伝票を目視確認されたいユーザーには透明ポケット、蓄冷剤(保冷剤)を投入されたいユーザーには冷媒ネット、資材管理されたいユーザーには英数字の管理番号シール貼り、資材の紛失リスクを回避されたいユーザーには縁取りテープ色を変更して視認性アップ。多様なアプローチから、オリジナルの「ネオシッパー」をご提案させていただけます。

ネオシッパー縁取り赤特注&連番シール付き

冷蔵倉庫や冷蔵車が準備できなくても、条件次第では「ネオシッパー」の運用で冷蔵帯を必ず維持することができます。ハムの流通過程における「ネオシッパー」の運用は非常に有効で、多大なコストをかけずに済む側面も喜ばれています。

3-2.蓄冷剤(保冷剤)の投入

◎蓄冷剤について詳細はこちら
蓄冷剤とは?保冷剤と蓄冷剤に違いはあるのか?解説します!

常温倉庫での一時保管であったり、常温車での輸送であれば、ネオシッパーで覆っただけでは温度管理に不安を覚えられる方もいることでしょう。温度管理の課題解決策として筆頭に挙げられるのが蓄冷剤(保冷剤)の投入です。

蓄冷剤+1000W(製品イメージ)

最近では、融点0℃の蓄冷剤以外に、+2℃~+12℃グレードの製品も流通していますので、適宜、管理温度に合わせた蓄冷剤を選定いただくことが可能になりました。キラックスでは、環境温度、保管時間(輸送時間)、貨物重量等の諸条件から蓄冷剤の必要投入量をシミュレーション計算するサービスも実施しています。温度管理をコーディネートさせていただけることは、定温物流容器メーカーの強みでもあります。

蓄冷剤の凍結風景

また、蓄冷剤を凍結するための設備ですが、ハイパワー出力で急速凍結できる冷凍庫から1Φ100V仕様の低温保存庫までアップライト型の新製品をご紹介させていただけます。プレハブ式の大型冷凍倉庫を準備することは費用面を鑑みてもさすがに難しいと言わざるを得ませんが、アップライト型の凍結庫であれば、常温倉庫の片隅に簡単に設置することができます。蓄冷剤の運用も従来に比べると随分とハードルが低くなりました。

凍結庫(201-EC/233FFE)_大和冷機工業製

4.まとめ

このように、今回はハムの保管について適性温度を軸に物流の要点を流通市場の特性と紐付けながら解説してまいりましたが、いかがだったでしょうか。製造方法、種類、そして包装パッケージ次第で管理温度が異なるため、保管(保存)の仕方に正解があるわけではありません。しかし、特異な種類でない限りは、大方、冷蔵管理が求められることが分かりました。このことにより、総じて常温倉庫で長期間にわたり保管することは避けるべきと結論づけた次第です。
一般消費者向けと業務用と非常に流通量の多いハムですが、前述の通り、現在のハム・ソーセージ市場は、人口減少の影響を受け続け需要は下降気味だといわれています。原料や飼料の高騰、そして物流コストと人件費の圧迫により供給側が苦慮していることも事実です。ただ、ハムソーが世の中から嫌厭されたわけではありませんから、定量的な需要は必ず存在し続けるといえるでしょう。
ハムの保管・輸送において、出来るだけコストをかけずに管理温度を保持したいと考えられている方、いまの物流コストを節減したいと考えられている方、その他課題を抱えられている方は、是非、キラックスまでご相談ください。一義的な解決策ではなく、持続可能かつ生産性に配慮したご提案で、必ず課題解決のお手伝いをさせていただきます。

キラックス理念

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