ドライバー不足の現状と課題から見える「物流のこれから」
トラックドライバーの人手不足は、社会問題となっている。
現在、運送業界や物流業界では、人手不足が深刻化しています。
特にネット通販が普及したこともあり、宅配など小口配送の荷物が急増している反面、
ドライバーの高齢化や労働条件の厳しさが重なり、ドライバー不足となっています。
・ドライバー不足は、どこまで深刻な問題となっているの?
・2024年問題から見える、ドライバー不足の現状と課題とは?
・ドライバー不足を解決するために考えられる対策とは?
この記事では、そんなドライバー不足の悩みを解決すべく、ドライバー不足の現状と課題を理解し、
解決策をご紹介していきます。
◎物流に関するその他の記事はこちら
・ドライバー負担軽減に向けて「中継輸送」の取組み事例を紹介!
・物流アウトソーシングで物流を効率化!!
■目次■
1.ドライバー不足の原因と現状とは?
1-1.ドライバーの主力は40~50代?
1-2.トラガール促進プロジェクト
1-3.ネット通販による需要の増加
1-4.苦戦するドライバー採用の現状
2.2024年問題でドライバー不足が加速?
2-1.時間外労働の上限規制が適用
2-2.「2024年問題」で利用料金UP!?
3.ドライバー不足を解決するために考えられる対策とは?
3-1.共同配送
3-2.モーダルシフト
3-3.中継輸送
3-4.在庫の分散化
3-5.物流資材の最適化
4.まとめ
1.ドライバー不足の原因と現状とは?
1-1.ドライバーの主力は40~50代?
ドライバー不足の原因の一つに、ドライバーの高齢化問題があります。
厚労省の「賃金構成基本統計調査」によると、大型トラックの平均年齢は49.4歳、
中小型トラックの平均年齢は46.4歳と、全産業平均43.3歳に比べて平均年齢が高くなっています。
また、40代~50代前半が全体の44.3%なのに対して、29歳以下は10.3%しかおらず、
全産業の40代~50代前半が全体の34.7%、29歳以下は16.6%に比べても高くなっています。
ドライバーの高齢化は重要な問題です。現在主力となっているドライバーの多くが40~50代で、
若い層がわずかということは、日本の人口と同じ構造にあると言えます。
また、若年層が運送業にあまり就職しない理由としては、荷役作業など負担が大きい労働環境や、
長時間労働など物流にかかわる労働条件の厳しさやイメージの悪さがあるからです。
1-2.トラガール促進プロジェクト
道路貨物運送業の女性就業者の割合は2.3%(2020年度)となっており、
全産業の平均44.5%と比べて、女性の割合は非常に少ない状況となっています。
そのため、国土交通省自動車局では、トラック運送業界における女性の活躍を促進するため、
女性トラックドライバーを「トラガール」と名付け、女性がトラック運送業界に進出しやすい
職場づくりをするために、トラガール促進プロジェクトを行っています。
トラガール促進プロジェクトでは、トラガールの魅力や活躍するトラガールのインタビュー、
免許の種類、女性活躍推進法などが載っています。
・トラガール促進プロジェクトhttps://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/
1-3.ネット通販による需要の増加
ネット通販市場の拡大により、宅配の需要が増加し続けています。
国土交通省の発表によれば、令和2年では、取り扱い実績が約48億個と過去最高であり、
平成4年から令和2年まで宅配便の取り扱い個数が毎年増加傾向にあります。
しかし、トラック業界はこの需要増加に人手不足が原因で対応しきれていません。
特にラストワンマイルとなる個人宅への配送が危機的状況にあります。
1-4.苦戦するドライバー採用の現状
トラック運転手の有効求人倍率が全職業平均よりも約2倍高いことも、ドライバー不足の原因です。
厚生労働省が公開している「ドライバー職種の有効求人倍率」を見ると、
貨物自動車運転手の有効求人倍率が1.88倍なのに対して、全職業は0.94倍となっています。
有効求人倍率とは、企業からの求人数を求職者で割った値のことで、
求職者数よりも求人数が多い時=人手が不足している時は、有効求人倍率が1を上回り、
逆の時=就職難の時は1を下回ります。
2.2024年問題でドライバー不足が加速!?
「2024年問題」とは、働き方改革関連法により2024年4月1日から物流業界に生じる様々な問題のことであり、
主には時間外労働の上限規制になります。
出典:(公社)全日本トラック協会「労働関係法令が改正されました」
http://www.ata.or.jp/tekisei/roumukannkei.pdf
2-1.時間外労働の上限規制が適用
「時間外労働の上限規制適用」は、いくつか改正点のある働き方改革改善法の中でも、
物流業界にとって大きな影響を与えると考えられます。
2023年3月31日まで、トラックドライバーには時間外労働の上限規制はなかったのに対して、
2024年4月1日から年間960時間に制限されます。
上限規制によって、1人あたりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されており、
トラック運送業界の売上減少、トラックドライバーの収入減少、
荷主企業の運賃上昇など問題が発生することが危惧されています。
2-2.「2024年問題」で利用料金UP!?
「2024年問題」は物流に従事するトラックドライバーの収入減少や物流会社の利益減少につながるだけでなく、
物流会社を利用する側の利用料金負担増にもつながると考えられます。
「2024年問題」によって時間外労働の上限が規制されることで、現在の仕組みが破綻してしまい、
トラックドライバーの収入や利益が減少してしまうことが予想される中で、
利用料金増加によってカバーしようとする動きが考えられます。
「2024年問題」は、トラックドライバー・運送業界だけの問題ではなく、荷主側にも影響がある問題と言えます。
3.ドライバー不足を解決するために考えられる対策とは?
3-1.共同配送
1社の製品を配送するのではなく、複数社の製品を同じコンテナやトラックで輸送することで、
より効率的な輸送が可能となり、トラック台数の削減につながります。
また、1台のトラックで複数社の製品を輸送できるため、長時間労働の改善や
荷役作業の負担軽減となり、人手不足の改善に期待できます。
◎「共同配送」についての詳細はこちら
物流構造改革!推進の一手として挙げられる共同配送とは?
3-2.モーダルシフト
輸送方法として、トラックだけでなく、鉄道や船舶を使って製品を輸送することで、
環境負担が小さく、長距離輸送可能、一度に大量輸送可能などのメリットがあります。
輸送に時間がかかるデメリットもありますが、長距離で大量輸送の際はお勧めの輸送方法です。
また、鉄道や船舶輸送はトラック輸送よりもCO²の排出量が少ないため、
SDGsの観点からも注目を集めています。
◎「モーダルシフト」についての詳細はこちら
地球にやさしい物流、モーダルシフトの課題を考える
3-3.中継輸送
中継輸送は長距離輸送を複数のドライバーで分担し、日帰り勤務が可能となる輸送形態であり、
労働負担の軽減や担い手の拡大につながります。
国土交通省によると、中継輸送を実施している事業者は、約16%と道半ばな状況であり、
国土交通省は、中継輸送のさらなる普及促進のため、中継輸送実現のポイントや
新たな取組事例をまとめています。
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000103.html
◎「中継輸送」についての詳細はこちら
ドライバー負担軽減に向けて「中継輸送」の取組み事例を紹介!
3-4.在庫の分散化
物流拠点を分散することで、配送効率改善に期待できます。
また、納品場所や配達エリアとの物理的距離が縮まり、リードタイムが短くなります。
しかし、在庫拠点を増やせばそれだけ拠点の維持や運営にコストがかかりますし、
在庫の振り分け作業が発生したり、出荷する倉庫を注文ごとに指定したりと、
手間がかかってしまいます。
こうした課題解決のため、在庫拠点の管理をアウトソーシング化する方法もあります。
3-5.物流資材の最適化
トラックドライバーの仕事内容には、荷積みや荷下ろしが含まれる場合がございます。
そのような作業がより簡単になるように、バラ積みではなくカゴ台車やパレット積みにすることで、
素早い荷積みや荷下ろしが可能となります。
また、トラックドライバーには、納品時の待ち時間が発生する可能性もあるので、
より素早い荷下ろしは、業務時間短縮にもつながります。
4.まとめ
この記事では、ドライバー不足の原因から解決策までご紹介させていただきました。
ドライバー不足は、高齢化や女性の割合が少ないこと、ネット通販による需要の増加などが原因にあり、
2024年4月1日からは時間外労働の上限規制が適用されることで、
さらにドライバー不足が悪化することが予測されています。
こうした課題を解決するためにも、共同配送やモーダルシフトの導入、中継輸送、在庫の分散化、
物流資材の最適化などできることから始めてみましょう。
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